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2023.04.18

「口コミ」は適正に!10月から始まる「ステマ規制」とは?


SNS時代の到来とともに、多くの人々が「口コミ」をもとに商品やサービスを選ぶようになった。
女性マーケティングにおいても、口コミを上手に活用することが商品の認知拡大・ブランドイメージの向上につながっている。
しかし近年では、広告であることを隠して商品やサービスを宣伝する「ステルスマーケティング(ステマ)」がしばしば社会問題となることも。
この状況を打開すべく、ついに今年10月から法律によってステマが規制されることになった。
今回は、本来の口コミの役割を見直すとともに、ステマ規制が始まる前に企業がやるべきことを整理していきたい。

心理学における「口コミ」の効果とは?

インターネット上で商品を購入したりサービスを利用したりする際、「口コミ」を参考にする人は少なくない。
特に女性は、商品やサービスを選ぶ際に「失敗したくない」「騙されたくない」という心理が働くもの。
そのため、女性をターゲットとしたマーケティングにおいては、相手が潜在的に抱えている不安を取り除いてあげることが大切だ。
しかし、売り手がいくら「大丈夫です!」と言ったところで、「どうせセールストークでしょう」と思われてしまうことも少なくない。
そこで効果を発揮するのが、「第三者からの客観的な情報=口コミ」だ。
この口コミがもたらす心理的効果のうち、代表的なものを3つ挙げてみたい。

ウィンザー効果

ウィンザー効果とは、当事者からの情報よりも、利害関係のない第三者からの情報の方が信頼性・信ぴょう性が増すという現象のこと。
例えば、エステサロンの店長に「うちのエステなら1カ月で痩せられますよ!」と言われるよりも、「あのエステに通ったら1カ月ですごく体重が落ちたよ!」という口コミを聞いた方が信頼できる、という心理がこれにあたる。

バンドワゴン効果

バンドワゴン効果とは、多くの人がある行動や意見に賛同することで、その行動や意見がより広く受け入れられるようになる現象のこと。
例えば、ある商品が大ヒットしているという情報が広まると、多くの人がその商品を購入しようとする傾向がある。
これは、その商品が注目されることで「人気がある=価値がある」という認知が生まれるためだ。

ハロー効果

ハロー効果とは、ある対象に対して1つの特徴が好意的に評価されると、その対象全体が好意的に評価されるようになる現象のこと。
例えば、好感度の高い有名人に商品やサービスを紹介してもらうことで、商品やサービス自体も魅力的に見える傾向がある。

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このような心理的効果を背景に、現在注目を集めているのが「UGC(User Generated Content)」だ。
UGCとは、企業ではなく一般ユーザーによって作成されたコンテンツ全般のこと。
InstagramやTwitterといったSNSでのコメント・口コミのほか、掲示板への書き込みやレビューなどがそれにあたる。
このUGCを悪用したものが、近年世間を騒がせている「ステルスマーケティング(ステマ)」だ。

ステルスマーケティングの手法とその問題点

ステルスマーケティングとは、消費者に広告であることを悟らせずに宣伝を行うマーケティング手法のこと。
「ステルス」には「こっそり何かを行う」という意味があり、ステルスマーケティングのほかにも、敵のレーダーに察知されにくいよう設計された「ステルス戦闘機」という言葉にも使われている。

ステルスマーケティングの手法には、大きく分けて2つのパターンがある。
1つが「不正レビューの投稿」、もう1つが「インフルエンサーや有名人を使った宣伝」だ。

不正レビューの投稿

企業が一般の消費者を装い、自社の商品やサービスに関する偽のレビューを投稿すること。
これにより、消費者は本物のレビューと見分けがつかず、企業が投稿したフェイクレビューを信じ込んで商品やサービスを選んでしまうことがある。

インフルエンサーや有名人を使った宣伝

インフルエンサーとは、SNSなどで多くのフォロワーを持ち、世間に大きな影響を与える人物のこと。
ステルスマーケティングでは、インフルエンサーや有名人に自社の商品・サービスを宣伝するよう依頼し、その際に宣伝であることを明示しないことがある。
これにより、インフルエンサーや有名人のフォロワーたちは宣伝であることに気づかずに、商品やサービスを購入してしまうことがある。

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「ステマ」と聞くと、2012年のペニーオークション(ペニオク)詐欺事件を思い出す人も少なくないだろう。
これは、運営者が詐欺罪などで有罪判決を受けるとともに、複数のタレント・芸能人たちによるステルスマーケティング(ステマ)があったことが判明し、社会問題にまで発展したもの。
ステマを行ったタレントたちは、後に大きな批判を浴びることになった。

ほかにも、口コミ評価代行業者による順位操作が発覚した「食べログ事件」や、映画の感想を描いた7本のマンガがほぼ同時刻にTwitterに投稿された「アナと雪の女王2ステマ騒動」など、ステマに関するトラブルは後を絶たない。

そこで消費者庁の有識者検討会はステマを景品表示法の「不当表示」に追加し、景品表示法に違反してステマを行った場合には広告主を処分の対象とする方針を固めた。

10月からついに規制がスタート!企業が気を付けるべきポイントは?

2023年3月28日、消費者庁によって、いわゆるステルスマーケティングが景品表示法で規制されることになった。
それが、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」だ(令和5年内閣府告示第19号)。

ここでは、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であるにもかかわらず、事業者の表示であることを明瞭にしないことなどにより、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難となる表示」を、景品表示法の「不当な表示」として禁止するとしている。
簡単にいうと、「広告の場合は、消費者が広告だとわかるように表示しなくてはならない」ということになる。

今回の規制におけるポイントは2つ。
「どのような広告が規制の対象となるのか」、そして「広告である旨をどのように表示するのか」だ。

規制の対象となる広告とは

今回のステマ規制において、消費者庁は「事業者が表示内容の決定に関与したとされるもの」を、広告とみなすとしている。

例えば、
事業者が第三者になりすまして自社商品に関する好意的な投稿をした場合
インフルエンサーに自社商品を提供し、SNSで「オススメ!」と投稿するよう依頼した場合
第三者に報酬を渡して評価の高い口コミを投稿してもらった場合
などが広告にあたる。

また、第三者に依頼して口コミサイトなどに競合他社に関するネガティブな投稿をした場合も広告に該当するので要注意。
これは今回のステマ規制の対象となるだけではなく、不正競争防止法違反等にも問われる可能性があるため、絶対に避けたいところだ。

一方で、
投稿した人が自らの意思・判断でレビューを書いた場合
は、広告に該当しない。

では、「ECサイトに出店する広告主が自社商品の購入者に対し、投稿に対する謝礼として次回割引クーポン等を配布する場合」はどうだろうか。

この場合、両者間で投稿内容に関するやりとりが一切なく、書く・書かないも含め購入者が自主的な意思でレビューを投稿できる状態であれば広告に該当しないとされている。
一方、「星を5つ付けてくれた投稿者には特別に謝礼を渡す」といった場合は広告とみなされ、規制の対象となる可能性が高いだろう。

ただしこのあたりの線引きは非常に難しいものがあり、「事業者が表示内容の決定に関与したとされるもの(=広告)」か、「第三者の自主的な意思による表示」かどうかは、最終的に消費者庁が客観的・総合的に判断するという。

広告である旨の表示方法

上記の通り、広告主が第三者にSNSやブログ、口コミサイトなどで自社商品・サービスの宣伝を依頼するなど「事業者が表示内容の決定に関与したとされるもの」は、広告であることを明示しなくてはならない。
その場合、「広告」「PR」「プロモーション」「宣伝」「タイアップ」といった文言の表示、あるいは「◎◎社から商品の提供を受けて投稿しています」といった文章の掲載が必要だ。

なお、「広告」である旨は、消費者にわかりやすく表示させなければならない。

広告の表示を大量のハッシュタグの中に埋もれさせてわかりにくくしたり、極端に小さく表示したりすることは「禁止行為」に該当するので注意したい。

「ステマ規制」の罰則と対象

ステルスマーケティングは消費者をだます行為であり、商品やサービスの健全な競争を阻害するもの。

景品表示法に違反していると判断されれば、再発防止の措置命令が出され、従わない場合は2年以下の懲役または300万円以下(法人の場合は3億円以下)の罰金、あるいはその両方が科せられる可能性がある。

なお、今回のステマ規制の対象は商品やサービスを提供している事業者(広告主)のみで、現段階では投稿者であるインフルエンサーは対象となっていない。

しかし、海外の事例や実際の運用状況から、今後規制の対象範囲がインフルエンサーや仲介業者等にまで拡大される可能性も否定できない状況だ。

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まとめ

10月からスタートする「ステマ規制」。
企業は、以下の2点に注意して口コミを運用していくことが求められる。

事業者が表示内容の決定に関わった場合は、「広告」「PR」など、広告である旨を記載する
広告である旨は、はっきりわかりやすく明示する

現在、「口コミ」は消費者が商品やサービスを選択する際の重要な判断材料となっている。
これらを不正にコントロールしていることが発覚した場合、消費者からの信頼を失うだけでなく、今後は法の裁きも受けることになる。

口コミが消費者に与える影響は大きいからこそ、正しく運用していくことが必要不可欠。
各種法規制に誠実に対応し、フェイクではない「本物のファン」を増やしていくことは、企業にとっても大きな財産になるだろう。

 

【参考】
消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の指定及び「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」の公表について

 


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