市場規模は100兆円超! シニアの心をつかむWeb制作とSNSの活用事例
近年、日本社会は急速な高齢化社会へと突入している。
総務省が2024年4月12日に公表した人口推計では、65歳以上の高齢者は約3,600万人を超え、総人口の約29%を占めるまでに。
日本の社会経済にさまざまな変化をもたらしているこの高齢化社会の進展は、企業にとって解決すべき課題のひとつであると同時に、新たなビジネスチャンスを生み出す可能性も秘めている。
今回は、右肩上がりで増加していくシニア世代に向けたホームページ制作のポイントやデジタルメディアの活用方法をご紹介したい。
INDEX
拡大するシニア市場
高齢化が進む日本。
内閣府が公表している「令和4年版高齢社会白書」によると、2025年にはすべての団塊世代(1947年~1949年生まれ)が75歳以上の後期高齢者になるとともに、国民の3分の1が65歳以上になるとされている。
シニアの増加に伴い、シニア全体の消費活動が増えることから市場の規模も拡大。
65歳以上のシニア向け市場の規模は2025年までに100兆円を超えると予測されている。(みずほ銀行産業調査部)
シニア層の人口増加の影響は、医療や介護といった分野にとどまらず、生活必需品となる食品や衣料、エンターテインメント、教育関連の業界にも及ぶと考えられている。
また、「予防」や「健康維持」につながる新ビジネスの創出も期待されているほか、デジタル技術を活用して生活にポジティブな変化をもたらす「シニアDX」へのニーズも高い。
総務省が発表している「高齢者のインターネット利用率(令和3年)」によると、国民全体の利用率82.9%に対して、60~69歳でインターネットを利用している割合は実に8割を超えている。
シニア層のスマートフォン所有率やECサイト利用率も飛躍的に向上しており、「シニア層はデジタルに弱い」という従来の認識はもはや過去のものとなりつつある。
マーケティングにおけるシニア層の分類
一口に「シニア」といっても、年齢や性別、ライフスタイル、価値観などによって、そのニーズは大きく異なる。
そのため、シニア層をより細かく分類し、それぞれに合わせたマーケティング戦略を展開することが重要だ。
シニア層をより深く理解するために、「アクティブシニア」「ノンアクティブシニア」「パッシブシニア」の3つのタイプに分類する例もある。
アクティブシニア
60歳を過ぎても仕事や趣味に意欲的で、健康志向が高く、活動的なライフスタイルを送っているシニアのこと。
マーケティングにおいて、もっとも注目されている層にあたる。
仕事や趣味、スポーツなどを楽しむことが多く、SNSやECといったデジタルに強いのも特徴のひとつ。
中には、孫と一緒に「推し活」に励む人も。
アクティブシニア向けの商品やサービスとして、スポーツ用品や旅行アイテム、脳トレ関連商品、スポーツジムなどがある。
ノンアクティブシニア
アクティブシニアとパッシブシニアの間に位置するシニアのこと。
身の回りのことは自分でできるが、体力や認知機能の低下、生活・経済面での不安など、さまざまな理由から積極的に外出するよりも家で穏やかに過ごすことを好む。
ノンアクティブシニア向けの商品やサービスとして、手芸や園芸などのホビー用品、家庭用健康グッズ、本・雑誌などがある。
パッシブシニア
日常生活において、第三者の支援を必要とするシニアのこと。
「ケアシニア」とも呼ばれる。
外出や趣味などの活動が制限されるなど、身体的な問題を抱えているケースが多い。
パッシブシニア向けの商品やサービスとして、車椅子や介護ベッドなどの介護用品、訪問介護・デイサービスなどの介護サービス、家事代行サービスなどがある。
シニア向けWebサイト制作の6つのポイント
高齢化社会の進展に伴い、シニア層の購買力はますます高まってきている。
しかし、シニア層は視力や聴力の低下などにより、複雑な操作や細かい文字を読むことが苦手である場合が多い。
そのため、シニアマーケティングでは、シニア層に使いやすいインターフェースを提供することが必要不可欠だ。
具体的には、以下のような点に注意したい。
文字は大きくはっきりと
文字が見にくいと、ホームページを読むのも億劫になってしまうもの。
シニア向けのホームページでは「フォントサイズを大きくする」「行間を広めにとる」などの工夫が必要だ。
文章が読みやすいと、ストレスなく情報を確認できるようになる。
視認性の高いホームページは、シニア世代にはもちろん、スマホやタブレット利用者のほか、視力が弱い方にとっても優しい設計だと言えるだろう。
なお、シニア層が読みやすいフォントサイズは、一般的に「16px以上」とされている。
ボタンやアイコンはわかりやすく
文字サイズ同様、ボタンやリンクなども大きくするなど、操作性への配慮も大切だ。
シンプルでわかりやすいデザインを採用することによって、操作ミスを防ぐほか、目的のページへサッとアクセスできるようになる。
また、ボタンの名称もわかりやすい表現にするなど、「迷わない導線づくり」を心がけたい。
コントラストはしっかり
シニア向けホームページは、視認性の高い「くっきりデザイン」がおすすめ。
特に重要なのは、文字と背景のコントラスト比だ。
Webサイトの文字と背景のコントラスト比は一般的に4.5:1が推奨されているが、シニア向けの場合は5:1以上にするのが理想的だと言われている。
同じように、配色にも気を配りたい。
年齢を重ねると「灰色」や「黄色」といった色味が認識しづらくなる一方、「緑色」は男女問わず好まれる傾向がある。
文章は短く簡潔に
文章は長くなればなるほど、理解しづらくなるもの。
できれば1文は30~40文字程度に収め、適宜改行を入れることで、シニアを含む全世代がスッと読めるよう配慮したい。
理解しにくい言葉には注釈を
わかりづらい言葉は、それだけで「理解」の妨げになることが少なくない。
専門用語や難しい横文字を多用することは、読み手が内容を理解できず、必要な情報を得られない可能性がある。
たとえば、医療機関のWebサイトで「インフォームドコンセント」という言葉を使う際などは要注意。
「医療従事者が治療内容やリスクなどを十分に説明し、患者さんが理解したうえで同意すること」など、わかりやすい注釈をつけるのが望ましい。
「刺さる」コピーを
広告コピーを作成する場合、ターゲットにしっかり届く表現やリズムを考える必要がある。
コピー作成のノウハウのひとつに「数字を入れて訴求力を高める」という方法があるが、シニア向けのコピーも例外ではない。
特に「60代からの保険」「75歳になってもハイヒールを!」など、年齢をキーワードとして使用することによって、より「自分ごと」として受け止めてもらえるように。
たとえば、有名コピーライターの岩崎俊一さん・岡本欣也さんが作成した老人ホームのキャッチコピーに、「65歳からの、未来。」というものがある。
このように、シニア層にとって使い勝手のよいWebサイトを作成するためには、ユーザー目線での設計が非常に重要だと言えるだろう。
シニアとSNS
シニアのデジタルメディア活用を語るうえで、InstagramやFacebookなどのSNSは外せない存在だ。
情報収集として閲覧利用する人のほか、ファッションや料理などのジャンルで自らインフルエンサーとして活躍するシニアも少なくない。
このような多様にデジタルメディア使いこなすシニア層に向け、企業が自社のSNSを活用するケースも多い。
次に、シニア層に向けて積極的にSNSを活用している企業の事例をご紹介したい。
介護老人福祉施設 やまゆりの里
兵庫県丹波篠山市にある介護老人福祉施設やまゆりの里。
こちらの介護施設では「夢をかなえる介護」をコンセプトに、InstagramやTikTokといったSNSで施設の様子や介護に役立つ情報などを日々発信している。
Instagramのフォロワー数は14.5万人、TikTokのフォロワー数は2万5,200人と、影響力も大きい。(2024年4月現在)
「キャバクラ」や「ホストクラブ」など介護施設のイメージを覆すようなキャッチーなイベントを多数企画し、そのユニークさからテレビ等のメディアに取り上げられることも。
「自分や自分の親もこちらの施設にお世話になりたい!」「介護士として働きたい!」など、数多くのファンを獲得している。
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こちらの施設では、各SNSのプロフィール欄に自社ホームページのURLを掲載しているのも特徴のひとつ。
文字通り、SNSからいつでも帰ってくることのできる「ホーム」の存在をしっかりとアピールしている。
SNSは認知に向いている一方、ホームページは「企業の公式な情報」であるため、信頼性が高く、申し込みや資料請求、採用応募などにつなげやすい。
まさに「SNS×ホームページ」の相乗効果が期待できる好例だと言えるだろう。
株式会社ベアーズ
家事代行や家政婦の派遣で有名な「ベアーズ」。
掃除や片付けといった日常の家事をサポートしてくれるだけではなく、実は高齢者支援サービスも提供している。
この支援サービスでは、介護保険制度の枠にとらわれず、高齢者が住む家の掃除、洗濯、料理等を代行してくれるほか、ライフスタイルや要望に合わせてオーダーメイドで依頼できるのが特徴。
さらに、訪問時の様子等を家族に伝えてくれるサービスも用意している。
ベアーズでは、自社の取り組みや家事代行の内容などをFacebookやInstagram、X(旧Twitter)、LINE公式アカウント、YouTubeなどで積極的に発信。
高齢者の方自身はもちろん、高齢者の生活を心配する息子娘といった家族との新たなコミュニケーションづくりに取り組んでいる。
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最後に
時代の流れとともに、デジタルメディアに慣れ親しむシニアは年々増えてきている。
インターネットやスマートフォンを駆使し、情報収集やコミュニケーションを楽しむシニアの姿はもはや珍しくないと言えるだろう。
一方で、直接自分の手に取れる新聞や会員誌などのアナログ媒体も「古くから続く信頼できる情報源」として、今もなお多くのシニアに親しみを持たれている。
シニアマーケティングにおいては、デジタルとアナログの両面を戦略的に活用することが重要だと言えるだろう。
また、多くのシニアは「熟考型」の消費者と言われ、購入に至るまでの意思決定に時間がかかる傾向がある。
「失敗したくない」という慎重な心理から、商品やサービスをよく吟味してから購入するのが特徴だ。
そのため、シニアマーケティングにおいては、短期的な成果よりも中長期的な視点で取り組むことが欠かせない。
丁寧にコミュニケーションを重ね、信頼関係を築くことで、シニア層から支持を獲得しやすくなると言えるだろう。
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